和歌山市 市長公室 企画政策部 移住定住戦略課
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2024 / 05 / 23
構成/冨田愛純
撮影/冨田愛純
ときどき出会う、好きを仕事に、まるでピーターパンのような目で働く大人。そんな”ビジネスピーターパン”の、踏み出した過去に焦点を当てて取材する新企画『ビジパン!踏み出す前の自分へ、今だから伝えられること』が、公式YouTubeにてスタート!ここでは、取材した編集者が、ビジパンから感じたことや学んだことを取材後記として展開。今回取材したビジパンは、学生時代に出会った映画を愛し続け、2023年10月にかつて”映画の街”といわれた〈ぶらくり丁〉に、日本一小さな映画館『シネマ203』をオープンした高水美佐さん。
シネマ203
オーナー
高水美佐
学生時代に、地元和歌山市の〈ぶらくり丁〉で映画に出会い、大学在学中にアメリカの映画学科へ留学。帰国後、2年がかりで入った憧れの配給会社〈フランス映画社〉で11年間の修行を積んだ後、大阪の配給会社そしてフリーランスを経て、2016年地元和歌山で自主上映会を企画。2023年10月に、〈北ぶらくり丁商店街〉に日本で1番小さい映画館『シネマ203』をオープン。
愛さずにはいられない人が放つ、愛の正体
正直、こんなにも愛に溢れた人だとは、思わなかった。
取材前、高水さんのオフィスに一度お伺いさせていただいたことがあったのだが、そのときは『映画一筋で生きてきました』オーラが強烈で、半人前のわたしなんかに心の内を話してもらえるのかと不安だった。
それが取材が進むにつれて、語られる表情・考え方・生き方すべてから”溢れんばかりの愛”を感じ、オフィスを出た頃には、すっかり高水さんのファンになってしまっていた。
事務所(わたしの)に戻り、興奮した頭を冷やしながら、高水さんが放たれていた”愛の正体”について、自分なりに整理してみたくなった。
一人の人間として、”純粋に楽しみたい!”という気持ち
まず、真っ先に感じたのは、”映画館で映画を楽しむ”ということへの愛。
『日常生活から2時間だけ、外の世界に行きたいって時に、1番手軽じゃないですか』
取材冒頭の「配信サービスで映画を観られる時代、映画館は必要か?」という質問に対して、高水さんから返ってきたこの言葉に、わたしは拍子抜けしてしまった。 なぜなら、もっと堅苦しくて玄人っぽい回答を予想していたからだ。「映画の音は、スマホなんかで聴くもんじゃない」「製作者たちに、失礼だ」なんて具合に。
それが、『人生、息抜きもしないとね。』と一人の人間としての純粋なメッセージが込められているかのような言葉に、早くも”高水さんという人”の魅力にハマってしまった。
ただ、取材を進める中で分かったことだが、高水さんご自身が「わたし、ホンマにどうかしてた」と吐露してしまうほどに、”純粋に映画を楽しめていなかった時代”もあったのだとか。
もしかすると、そういう時代を経てこられたからこそ、”ただ純粋に、映画館で映画を楽しむ”という気持ちを、何よりも大事にされているのではないだろうかとも思った。
(”純粋に映画を楽しむ感覚”を思い出されたエピソードが、かなり激アツなので、まだの方はぜひ取材動画を観ていただきたい。)
半端じゃない”覚悟と愛”に、魅了される人たち
一方で、”映画館で映画を楽しんでほしい”という気持ちだけで、”たった一人で映画館を運営する”という険しい道に突き進めるわけではないということも痛感させられた。
とにかく映画への愛と同じくらい、高水さんから一貫して感じたのが、”好きなことのためならば”のストイックさだ。取材を通して、個人的にいちばんぶっ刺さったこの言葉。
『モノを好きになるって、そういうことやと思うんです。苦じゃないんです、努力とか回り道とか。いくらでも考えてられるし、いくらでもやれる』
高水さんご自身、「そう思えるモノ(=映画)に出会えたことは幸運でしかない」と語られているが、そこに対する向き合い方やかけてこられた労力は、ある人にとっては幸運とは思えなくなるほど辛いものかもしれない。
でも、それくらいの情熱と愛情をかけてこられたからこそ、高水さんを応援したい=”高水さんファン”が、後を絶たないのではないだろうかとも思った。(ご本人は、「わたしではなく、映画館のために応援してくれている」とお話しされていたが、わたしはそうではないような気がした。)
愛するモノを愛し続けた先に見つけた、”幸せの形”
そんな愛し愛される高水さんが、たった一人で映画館を始めてから知ったという”幸せの形”が、これまた愛に溢れていた。
『こんなに人に感謝する気持ちになったことない』
なんなんだ、このクライマックスは…。愛するモノを人生かけて愛し続け、そんな高水さんを愛さずにはいられない人たちに囲まれた今、その人たちへの愛に溢れているなんて。
わたしは時に、「好きなことを突き詰めたい!」と夢中になっていると、孤独を感じてしまうこともあるのではないかと思っていたところがある。しかし、それはもしかしたら、本当に好きなことではないのかもしれない。
だって、本当に心の底から好きで、愛しているのであれば、高水さんのように「きっと存在する自分と同じ気持ちの人に届いてほしい!」という想いに自然となるはずだから。そして、その想いに魅了された愛ある人たちが、集まってきてくれるのではないかと。(もちろん、それまでには並ならぬ覚悟と努力が必要だろうが)
そして、わたしのように高水さんに魅了された人たちが、〈シネマ203〉に足を運びたくなり、”日常から2時間だけ現実の外に行ける映画館で映画を観る魅力”に、ハマっていってしまうのではないだろうか。
取材動画はこちら☟
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http://www.city.wakayama.wakayama.jp/ijuteiju/index.html