アンテナを幅広く巡らせて、和歌山市で掴んだチャンス【こんな生き方もあったのかvol.1】

2023 / 03 / 17

アンテナを幅広く巡らせて、和歌山市で掴んだチャンス【こんな生き方もあったのかvol.1】

構成/冨田愛純

撮影/冨田愛純

和歌山市で自分らしく活動している人を通して、全国に和歌山市の魅力をお届けしたい。そんな想いから立ち上がったインタビュー企画「こんな生き方もあったのか」では、その人が辿ってきた道のり、これまでの人生を振り返り思うこと、さらには今後実現していきたいことに迫ります。本企画の第一弾は、4年前和歌山市に移住し、和歌山城整備企画課で学芸員をしている伊津見孝明 さんにお話をお伺いしました。今までの道のりを振り返って伊津見さんが思う、自分らしい人生の歩み方とは。

和歌山市

和歌山城整備企画課学芸員

伊津見孝明

和歌山市和歌山城整備企画課学芸員。
福岡県北九州市出身。平成24年(2012)福岡大学大学院博士課程前期修了。専門は近世城郭史。一般企業の営業職や今治城(愛媛県)学芸員を経て令和元年(2019)より現職。日々和歌山城の整備や調査研究に携わっている。プライベートでも城巡りをしており、和歌山県内だけでなく県外に遠征することもしばしば。


人によってガラッと色が変わる学芸員のお仕事 

学芸員って和歌山城整備企画課に私含め5人いますが、みんなそれぞれ分野が違うので、人によっても担当によってもガラッと色が変わりますね。僕はやっぱりお城と紀州徳川家のことをメインでやっています。今は和歌山城の天守閣の改修や、昔大奥があった二の丸御殿跡の整備を今後どうしていくかなどを検討しています。

仕事はそれだけじゃなくて、わかやま歴史館っていう和歌山城のガイダンス施設で、年に3回小規模ですけど企画展をやっています。だいたい年に1回は必ず、自分が企画展を持って、企画立案からテーマ、何を展示するかとかも全部決めています。あんまりマニアックな内容にしちゃうと人が来なくなっちゃうので、いろいろバランスが難しく、今だったら刀剣がブームなので刀を展示したら、人が来てくれるかなど考えたりしています。

もう1つは広報の一環として、いろいろな方を案内したり、メディアの取材を受けたりしています。コロナが蔓延していた時はパタっと途絶えていたんですけど、ここ最近は復活してきていて、和歌山城の魅力をもっとたくさんの人に知ってもらって、和歌山市に来てくれる人が増えると嬉しいですね。

和歌山城「御橋廊下」を案内する伊津見さん


最終ゴールを学芸員に置きつつも、一度は民間企業へ 

正直、大学に進学するときには将来の目標として、学芸員になるか大学の先生になるかの2つしかありませんでした。中学校3年生のときにお城特集の雑誌を読んで、そこからお城を巡るうちにどんどん好きになり、地元福岡の大学で歴史学科に進学しました。周りは自分と似たような人間がいっぱいいて、マニアックな歴史の話で盛り上がりましたね。


ただ学年が進むにつれて、先輩から学芸員になるのは簡単ではないといった話を聞いたり、親からも一般企業への就職を勧められるようになりました。そこで、一度就職し、働きながら試験を受けて学芸員を目指そうと思い、修士課程終了後に地元の民間企業に就職しました。


はじめのうちは、休日に好きなお城の研究会やお城巡りをする生活を送っていましたが、忙しくなるうちにだんだんお城とは無縁の世界になってしまい、2年半勤めた会社を辞めました。


アンテナを幅広く巡らせ、なりたい一心で掴んだチャンスの数々



退職後に大分県で開催されたお城の研究会に参加したところ、昔お世話になった佐賀県の学芸員の人に再会して、そこでたまたまアルバイトを探していた福岡県の学芸員の方を紹介していただきました。そこからは、福岡県の九州歴史資料館という博物館でアルバイトをしながら、学芸員になりたいという一心で試験を受け、まずは愛媛県今治市の今治城で非正規の学芸員になりました。


そこでも結構好きなことをやらせてもらい毎日充実していたのですが、次は正規の学芸員を目指そうと考えていたところに、和歌山市が城郭専門の学芸員を募集しているという情報をゲットしたんです。お城専門というところにも惹かれて受験したところ、採用いただいたというのが和歌山市に来た経緯になります。一度会社を辞めた人間が、学芸員になりたいという一心で這い上がり、何とかここまでたどり着きました。


運がよかったというのもありますが、チャンスは来る時があるんですよね。そのチャンスを迷わず掴めるかっていうところが大事かなと。あとは、いつそういうチャンスが巡ってきても掴めるように、アンテナを幅広く巡らせておくことも大事だと思います。僕も大分県の研究会に行かなかったら、今ここで学芸員として働いていないと思います。



お城だけじゃない和歌山市のおもしろい歴史を発掘して、世に出していきたい 


和歌山市に来た当時、前の職場の先輩から「奈良、京都、大阪が近いからそんなとこもいっぱい見てきた方がいいよ」と言われたんです。確かにここから京都は最短で2時間あれば行けちゃうんですよね。福岡に住んでいた時って、京都に行くってなったら新幹線で行くか、夜行フェリーで大阪まで行って、大阪から電車で行くくらいしかなかったんです。

あと、和歌山市に来てから、今まではお城オンリーだったんですけど、いろいろな分野にも目が向くようになりましたね。お城以外にも興味を持ってる分野の一つに徳川御三家があるんですが、紀州徳川家が治めたこの地域の歴史って他と違うところが見られて、そこがおもしろいなと。

歴史の研究って主観的に見ちゃうとちゃんとした研究ができなくなっちゃうんですよね。なので、いつもよそから来た人間の目線で物事を見るようにしてるんですけど、特に江戸時代の歴史を調べるといろんな事実が浮かび上がってきて、おもしろいなって思うことが結構あるんです。和歌山城も含めてそういった和歌山市のまだまだ知られていない歴史や史跡を発掘して、世に出していきたいです。

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