妄想で終わらせない。”自分たち”が暮らして楽しいまちを作っていく【こんな生き方もあったのかvol.9】

2023 / 10 / 05

妄想で終わらせない。”自分たち”が暮らして楽しいまちを作っていく【こんな生き方もあったのかvol.9】

構成/冨田愛純

撮影/冨田愛純

和歌⼭市で⾃分らしく活動している⼈を通して、全国に和歌⼭市の魅⼒をお届けしたい。
そんな想いから⽴ち上がったインタビュー企画「こんな⽣き⽅もあったのか」では、その ⼈が辿ってきた道のり、これまでの⼈⽣を振り返って思うこと、さらには今後実現していきたいことに迫ります。今回は、2015年に和歌山市の中心地”大新エリア”に移住し、まちづくり会社「ワカヤマヤモリ舎」の代表取締役であり、人気ゲストハウス〈RICO〉の設計・運営も手掛ける宮原崇さんにお話をお伺いしました。 「もともと、ゲストハウスの運営もまちづくり会社も作ろうと思っていなかった」と語る宮原さんが、辿ってきた人生とは。

まちづくり会社「ワカヤマヤモリ舎」 

代表取締役 

宮原崇

和歌山県和歌山市出身。一級建築士。
地元の大学で建築を学んだあと、神戸と大阪で建築事務所に勤務。地元での独立を考えつつ、2014年11月開催の「第2回リノベーションスクール@わかやま」に参加し、「ゲストハウスRICO」を設計・運営。現在は、まちづくり会社「ワカヤマヤモリ舎」の代表取締役として、「自分たちが暮らす大新エリアを歩いて楽しいまちに」という想いのもと、エリアマネジメントにいそしんでいます。

”和歌山市が1番”とは限らない。だけど、自然体で落ち着ける場所。


もともと和歌山市に戻ってくるつもりはなくて。最初は独立するにしても、以前働いていた大阪でやろうかなと考えていました。ただ、独立をリアルに考え始めたとき、都市部だと設計の仕事がたくさんある分、ライバルも多いなと思ったんです。その反面、和歌山であればライバルが少なく、大阪や神戸で働いてきた経験があればある程度仕事を作っていけるのではないかと思い、地元和歌山市での独立を考えるようになりました。 


また、和歌山は都市部よりも生活コストがかからない分、そこまで働き詰めの生活をせずとも、時間に余裕のある暮らしが送れるのではという考えもありました。なので、「将来は絶対に和歌山で暮らしたい!」という強い気持ちがあってUターン移住したわけでないんです。やっぱり、まだまだ東京や大阪といった都市部に魅力的なまちやお店は集まっていると思いますし、移住して8年経った今でも、”和歌山が1番良いか?”と言われたらそうではないとも思います。 


ただ「住めば都」とはまさにこのことで、自然が身近で空も広く、寒すぎず暑すぎず過ごしやすい気候なので、今は和歌山市にいるのが落ち着きます。また、和歌山の人は仕事でもプライベートでも”自然体”でいる人が多いとも感じていて。行政や仕事関係の人もあまり堅苦しい雰囲気じゃないので、フラットな関係でコミュニケーションができるところも、和歌山市の魅力の一つじゃないかなと思っています。 

まちづくり会社「ワカヤマヤモリ舎」代表取締役 宮原崇さん


想定外の挑戦からはじまった”和歌山市ライフ”


高校2年生の進路選択の時期に、たまたま実家が新築を建てることになり、ゼネコンの営業をしていた父親が、新しい家の設計や間取りの絵を描いていたんです。それを見てなんとなく「仕事にできたら面白そうだな。」と思い、地元にある和歌山大学で建築を学んだ後、大阪と神戸の建築事務所で働きながら、一級建築士の資格を取得しました。


神戸の事務所では主に自動車メーカーのショールームの設計をしていて、予算は大きかったんですけど、”車のスケール”ですべてを設計しないといけないので、あまりおもしろくはなくて。笑 僕は、”人のスケール”で居心地の良い空間を作れる方が好きだなと思い、次第に独立を考えるようになりました。地元での独立を考え始めたタイミングで、第2回リノベーションスクールが和歌山で開催されることを知り、「和歌山での人脈作りや仕事のきっかけになれば」と思い参加しました。 


リノベーションスクールは、遊休不動産を活用した事業計画をチームで作成する短期集中型のワークショップで、僕たちが担当することになった建物が、現在〈RICO〉が入居するユタカビルだったんです。スクール終了後、担当したプロジェクトが実際に動き出すことになり、この建物をゲストハウスにして、そこを拠点に”エリアマネジメント”を手掛けていこうというプランをチームで考えました。 

国内外から人が集まるゲストハウス「RICO」


最初は設計をメインに関わっていくイメージだったのが、紆余曲折あり、ゲストハウスの運営、さらにはまちづくり会社も設立することになり現在に至ります。僕自身、接客経験が全くなかったので、ゲストハウスの運営部分に関しては、本当にやっていけるのかなという未知なところはありました。


ただ、設計事務所として独立を考えていた頃から、単に設計の仕事だけをやるのはおもしろくないなと思っていて。お客さんと話しながらコーヒーを飲めるスペースがあったり、そこでイベントを開いたり、県外に出た友人が泊まれるような事務所を構えたいとは思っていたので、方向性は一致していたんです。だいぶと規模感は大きくなりましたが。笑 



少しずつでいい。ベストなタイミングで着実に実現していく


会社を設立した時点で、ゲストハウスや飲食、コワーキングスペースや学生アパートが入った複合施設を作り、そこを起点にエリアマネジメントをしていこうというビジョンはありました。ただ資金的にも人員的にも、いきなり全部に取り掛かるのは難しいよねとなり、まずはゲストハウスから始めることになりました。そして、ゲストハウスが軌道に乗ったタイミングで、ちょうどキッチンをやってくれる人に出会い、飲食も始めて…といった形で一つずつ形にしていきました。


最初から全部を完璧に作ろうとはせずに、できるタイミングでやっていくというのが大事かなと思っていて、〈RICO〉も今で完成でなく、これからも変化していくと思います。 


2023年7月に、新たに〈Charlie’s Bed〉というサイクリストをターゲットにしたホステルもオープンしたんですけど、「車社会の和歌山で自転車文化が育つきっかけや場所を作れたら」という想いは、実は3〜4年前からあったんです。ただ当時は、そこまで手が回らなかったり物件との兼ね合いですぐには実現せず、構想から3年経った昨年、できそうなタイミングだなということで動き出しました。今後、〈Charlie’s Bed〉が起点となって、県外からサイクリング好きな人が和歌山に遊びに来る流れを作っていければなと思っています。 

〈RICO〉から徒歩15分の場所にオープンしたサイクリスト向けホステル〈Charlie’s Bed〉


周りの方からはよく、「RICOって自然と人が集まってくる場所だよね」と言っていただくことがあり、”そういう場所でありたいな”という想いはあるのですが、そのために特別何かしているということはあまりなくて。そもそもコミュニティ自体が、作ろうとして作れるものでもなかったりするので。 


ただ、僕も含めたスタッフ全員が”自然体”でいるというのは、〈RICO〉に人が集まってきてくれる要素の一つなのかなとも思います。もちろんサービスはしっかり提供しつつも、”お客さんとお店の人”みたいな壁はあまり作らないようにして、できるだけフラットな関係で接するというのは、心がけているかもしれないです。その方が、僕らも堅苦しい接客にならず、来てくれた人にとっても居心地の良い空間になるんじゃないかなと。 

〈RICO〉の1階にあるソファで、横になってお昼寝してしまうお客さんもいるほど居心地の良い空間


”自分たち視点”のまちづくりで目指す、「歩いて楽しい大新エリア」


移住してきた8年前からするとこのエリアも、お花屋さんやカフェ、ご飯屋さんや美容室など新しいお店が増えてきましたが、これからより『歩いて楽しいまち』 を目指していきたいなと思っています。 


エリアマネジメントをする上で、僕の場合は、どちらかというと”主観”を大切にしている方で。もちろん「大新エリアに住んでいる方々の暮らしが豊かになったらいいな」という気持ちはありますが、人それぞれで求めているものは異なると思っているので。”人が何を求めているか?”というよりは、”自分がこんなお店があったら嬉しいな”とか”こんな場所があれば居心地が良いな”という妄想を、実現するまで言い続けて、少しずつ形にしていきたいなと思っています。  


このエリアの中心にある「大新公園」で、年に2回ほど大新ピクニックというイベントを開催しているのですが、これからは*PFIみたいな動きもしていきたいなと思っていて。


*PFIとは:公園の中で、民間が収益活動をして、その利益をもとに公園を良くしていこうという動き。


イメージとしては石窯で焼いたピザが食べられるレストランがあったり、近所にあるカフェと連携してパークウェディングをやってみたり。あとはSDGs的な観点で、お花屋さんで出たお花のロスや食品廃棄物を堆肥にして、ハーブガーデン的なものを作って、婦人会の方々に面倒を見てもらうみたいな。笑 こういう妄想も2〜3年前くらいからしていて、時間はかかるかもしれませんが、少しずつ実現していきたいなと思っています。


ゲストハウスRICOの詳細はこちら☟

https://www.guesthouserico.com/


和歌山市移住定住支援サイトはこちら☟

http://www.city.wakayama.wakayama.jp/ijuteiju/index.html

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