”苦しいことも楽しい” 小さな港町からはじまる大人の秘密基地づくり 【こんな生き方もあったのかvol.11】

2023 / 11 / 16

”苦しいことも楽しい” 小さな港町からはじまる大人の秘密基地づくり 【こんな生き方もあったのかvol.11】

構成/冨田愛純

撮影/冨田愛純

和歌⼭市で⾃分らしく活動している⼈を通して、全国に和歌⼭市の魅⼒をお届けしたい。
そんな想いから⽴ち上がったインタビュー企画「こんな⽣き⽅もあったのか」では、その⼈が辿ってきた道のり、これまでの⼈⽣を振り返って思うこと、さらには今後実現していきたいことに迫ります。今回は、2022年に和歌山市の小さな港町〈加太〉に移住し、地域おこし協力隊として活動しながら、”秘密基地づくりプロジェクト”に挑む辻昌浩さんにお話をお伺いしました。

和歌山市地域おこし協力隊

秘密基地クラフトマン

辻昌浩

大阪府摂津市出身。大阪でシステムエンジニアとして勤務する傍ら、通信制建築大学と神戸の西村組で建築の基礎や空き家改修などについてを学ぶ。2022年10月より和歌山市の港町〈加太〉の空き家で”秘密基地づくりプロジェクト”を開始。2023年8月からは和歌山市加太地区の地域おこし協力隊としても活動中。


通り過ぎていた”小さな港町”で見つけた、理想の活動拠点 


もともと海が好きで、南の方にある白浜や串本にはよく遊びに行っていたので、和歌山県自体には親しみがあったんですけど、和歌山市は高速でしか通ったことがなくて。なので、はじめから「和歌山市で秘密基地をつくりたい!」と強い想いがあったわけじゃなく、たまたま紹介してもらった物件が、和歌山市の港町〈加太〉にある空き家だったんです。 


それでいざ、空き家の視察に行ってみたら、森に囲まれたロケーションで、海までも歩いて5分ほど、しかも僕の住んでいる大阪から1時間ちょっとで来られる立地で。まさに求めていた条件にピッタリで、一目惚れしてしまったんです。あと、加太のノスタルジックな街並みや落ち着いた雰囲気も個人的に好きで、このまちで、長年思い描いてきた”秘密基地づくりプロジェクト”を始めることにしました。 


今は、加太で”秘密基地プロジェクト”を進めながら、大阪や神戸にも通って仕事をすることもあります。正直、僕の中で「加太=田舎」っていう感覚はあまりなくて。たしかに自然が身近で空気もゆったりはしているんですけど、大阪との距離が近くて、不便を感じることもあまりないので、”秘密基地づくりに夢中になれる場所”という感じですね。

和歌山市にある小さな港町〈加太〉


秘密基地をつくる感覚で、大人が夢中になって働ける場をつくりたい 


大学卒業後、IT企業に就職してシステムエンジニアとして安定した毎日を送っていたんですけど、”人生の週7日あるうち週5日を自分が力を出せないところで働くこと”にモヤモヤを抱き始めて。それで「自分が本当にやりたいことって何だろう?」と考えていくうちに、『小さい頃に好きだった”秘密基地づくり”を仕事にしたい』という想いが芽生えてきたんです。そこから、「秘密基地をビジネスにするための知識をつけよう」と、平日週5日働きながら土日に通信制の建築大学に通うという生活を2年間ほど送っていました。 


ただ学校に通う中で、「ゴールは、あくまで”秘密基地づくりを仕事にすること”で、建築士になりたいわけじゃないんだよな…」と再び迷走してしまい。そんな時、空き家を生まれ変わらせてビジネスにしている一級建築士の西村周治さんという方をテレビで観て、「何かヒントを得られるかもしれない」と直接連絡を取り、建築の現場を手伝わせてもらうことになりました。 


西村組でのお昼ごはん風景


この現場での経験が、今の活動におけるモチベーションにすごくつながっていて。荷物を運んだり、掃除をしたりといった単純な作業って、どうしても”しんどくてつまらない”っていうイメージがあると思うんです。だけど、そのしんどい作業も『自分たちがやりたい・つくりたいもののために働いている時間』ってなると、”苦”に感じない、むしろみんなで作り上げるその過程を楽しんでいる自分がいることに気が付いて。


その時に、「子どもの頃に秘密基地を作っていた時もこんな感覚やったな。」「そんな秘密基地をつくる感覚で、大人が夢中で働ける仕組みや環境を作りたいな」と、自分の中でビジョンが明確になっていったんです。 


このタイミングで、5年間勤めたIT企業を退職して、西村さんの下でしばらく働いていた時に加太の空き家を紹介してもらい、長年思い描いていた”秘密基地づくりプロジェクト”をスタートさせました。 


取材を受ける和歌山市地域おこし協力隊の辻昌浩さん


苦しいことも楽しい。やりたいことに向かっているから 


秘密基地といっても、自分の仲間が集うだけの場所だとビジネスとして成り立たないので、まずは空き家をどういう場所にしていくかを考えて、〈泊まれるシアターハウス〉をつくることにました。加太は、訪れる人の90%が日帰り観光で、海水浴や釣りなど部分的なスポットを楽しむ方が大半なんです。であれば、〈宿泊〉と今の加太にはない〈映画館〉を掛け合わせることで、”加太に長く滞在したいと思うきっかけ”を生み出せるのではないかなと考えています。 


今まさに2024年4月のオープンに向けて絶賛作業中なんですけど、想像していたよりもしんどいことばかりで、5年前の自分が今の自分を見て「こんな働き方できるか?」と言われたら、できないと思います。笑 タスクは山積みだし、休みもなかったり、まだ秘密基地づくりでお金も生み出せていなかったりするので。 


やりたいことを実現するためには、『やる気』と『仲間』、そして『お金』の3つが必要だと思っているんです。なので、僕自身お金を稼ぐこと自体そんなに好きじゃないんですけど、秘密基地づくりをビジネス化していくためには、しっかりお金も稼いでいきたいし、必要なことは責任を持ってやっていきたいです。 


加太の空き家での秘密基地づくりの様子


ただ、好きじゃなかったりしんどいと感じることも、自分のやりたい目標に向かってやっていることなので、嫌じゃなくて。それも、また楽しいという感覚なんです。あと、自分のキャパ以上の無理はしていなくて、する必要もないと思っています。


無理をして、やりたかったことに義務感を感じるようになると、どうしてもつまらなさが出てきてしまうと思うので、どんなに小さくてもいいから、1番近くにあるできることを積み重ねていくことが大事なのかなと。 


観光客だけじゃない。地元の人の日常も豊かになる場所を目指して 


まずは、ロケーションやノスタルジックな街並みなど〈今ある加太の魅力〉と〈シアターハウス〉が組み合わさることで、” 日帰りでは味わえない加太の魅力”を、たくさんの人に楽しんでもらえたらなと思っています。と同時に、地元・加太の人にとっても” 日常が少し豊かになる場所”になればいいなと考えていて。現状、加太で娯楽施設となると、飲食店に飲みに行くくらいだったりするので、仕事終わりにご夫婦やご家族で、ふら〜っと映画を見に来てもらえたら最高ですね。 


「小さな町には何もないから楽しめない」じゃなくて、今あるものにちょっと手を加えれば、観光客の人はもちろん、地域の人たちにも楽しんでもらえる場所が生まれるはずなので。〈シアターハウス〉がきっかけとなって、「田舎でもこんなにおもしろいコトができるんだ」って感じてもらえたら嬉しいです。 


”秘密基地づくりプロジェクト” としては、最終的には世界でやっていきたいと思っています。厳密にいうと、世界中に秘密基地をつくるというよりは、『自分たちのやりたい目標に向かって、夢中になって働ける場』をどんどんつくっていきたくて。今って、効率主義な世の中で、そうなってくると仕事の目的だったり目標っていうのを忘れたままに働いている人も多いんじゃないかと思っているので、まずは加太をスタートに世界に羽ばたいて行けたらなと。


辻さんと一緒に秘密基地づくりを手伝ってくれる仲間募集中!

お問合せ☞ tjms.02.110@gmail.com


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